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  • 執筆者の写真高森明勅

旧宮家系男子が法律だけで皇籍取得する案を推す「神社新報」

更新日:3 時間前


旧宮家系男子が法律だけで皇籍取得する案を推す「神社新報」

「神社新報」(6月24日号)の論説に旧宮家プランを巡り、以下のような主張が展開されていた。


「さまざまな条件を考慮すれば、養子の実現も決して容易ではない。…いざという時のために第三案(旧宮家系国民男性を法律だけで皇族にするプラン)も同時に立法化しておくべきではなからうか。


対象者となられる旧宮家の方々には、その覚悟を持って生活していただくことが必要であるからだ」


同紙の読者はほとんど神社関係者に限られる。その社会的影響も勿論、限定的だ。従って、特に視野に入れるには及ばないかもしれない。


しかし、上記の主張には男系限定派独特の思考パターンがよく表れている。なので、参考迄に取り上げてみよう。 


先ず、養子縁組プランを実現することの困難さや現実味の無さは、さすがに気付いているようだ。


「さまざまな条件を考慮すれば…決して容易ではない」と率直に認めている。しかし、男系派的思考がユニークなのは、そこから先だ。


「いざという時のために」現在の皇族とは全く無関係に“法律だけで”皇籍取得を可能にするプランも「同時に」制度化せよ、と訴える。これは失礼ながら、自分が何を主張しているか、理解できているのだろうか。養子縁組プランが挫折するということは、何を意味するか。


憲法違反という致命的な問題点を敢えて横に置いても、旧宮家系子孫男性の中に“養子”になりたいという該当者が誰もおらず、皇室にも養子を受け入れて“養親”になろうとされる皇族がどなたもおられなかった(又はその片方だけながら合意に至らなかった)事実を示す。


つまり、歴史上の源氏や平家と同じく既に“国民の血筋”となった旧宮家系男性が婚姻も介さないで皇族になってしまうという、厳格であるべき皇室と国民の区別をないがしろにする全く“先例の無い”乱暴なプランに対して、皇室ご自身や旧宮家系当事者がハッキリと拒絶された結果に他ならない。


にも拘らず、当事者の意思とは無関係に、法律一本で旧宮家系男性に皇籍取得を強制できる制度を作れ!と主張している。


その上で、「いざ」となればそういう“奥の手”もあるので、旧宮家系男性は逃げ隠れしても無駄だと諦めて、予め皇籍取得の「覚悟を持って生活していただくことが必要」と迫っている。何様だろうか。


有識者会議報告書でさえ、「(養子縁組プランに対して)より困難な面がある」と書かざるを得なかったプランを、前面に掲げる感覚を疑う。


いかにも男系派らしい強引極まる主張だ。

しかし改めて言う迄もなく、旧宮家系男性は「国民」である以上、憲法第3章(国民の権利及び義務)が全面的に適用される。仮にこの論説が唱えるような法律が国会で可決されたとしても、当事者の意思に反して皇籍取得を“強制する”内容であれば勿論、憲法違反なので無効だ。


養子縁組が無理なら、法律だけでというプランは“もっと”無理、ということが何故、理解できないのだろうか。


なお神社新報社からは以前、同社政教研究室編『天皇·神道·憲法』が刊行されている(執筆者は葦津珍彦氏、昭和29年)。


そこには、これまで何度も紹介して来たように、旧宮家の皇籍離脱から僅か7年ほどしか経過していない時点で、既に以下のように指摘していた。


「占領下に皇族の籍を離れられた元皇族(旧宮家系“子孫”ではなく、数年前迄は現に皇族であられた方々ー引用者)の復籍ということが一応問題として考へられるであろう。


この間の事情については、論すべき問題も少なくないが、その事情の如何に拘らずの一たび皇族の地位には離れし限り、これが皇族への復籍を認めないのは、わが皇室の古くからの法である。


…この不文の法は君臣の分義を厳かに守るために、極めて重要な意義を有するものであつて、

元皇族の復籍と云ふことは決して望むべきではないと考へられる」

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