皇位継承資格の「男系男子」限定にこだわる傾きが、永田町周辺など国内の一部に未だに残っているのは残念だ。
しかし、男系男子への固執が皇室の存続そのものを危うくする。その事実がもっと広く、もっと切実に認識される必要がある。何故「男系男子」固執が皇室を滅ぼすのか。差し当たり3の理由を挙げることができる。
その1。
改めて言うまでもなく、一夫一婦制で少子化が進む条件下で、皇位継承資格を男系男子限定という前代未聞の狭さに絞るなら、当然、皇位継承者がいなくなってしまう。これが最も直接的な理由だ。
しかし、その他にも理由がある。
その2。
皇位継承が行き詰まる危機を打開しようとすれば、男系男子限定を前提とする限り、旧宮家プランのように一般国民の間に血筋を根拠とする差別的な取り扱いを持ち込む以外に方法がない。そうすると畏れ多いが、国民にとって皇室は国民の中に“不平等”をもたらす元凶のように、見えてしまいかねない。
又、天皇のお子様がいらっしゃるにも拘らず、単に「女性だから」というだけの根拠で、皇位継承資格が認められないなど、国民の一般常識や現代の普遍的な価値観とはかけ離れた皇室の在り方が、当事者の方々のお気持ちに関わりなく余儀なくされる。
そうすると多くの国民にとって、皇室があたかも時代に逆行し、男尊女卑的な古い価値観を体現する存在であるかのように、受け取られかねないだろう。
このような皇室に対して、人々は今後も変わらずに素直な敬愛の念を抱くことができるだろうか。至難ではあるまいか。
いわゆる“男系の血筋”だけを維持したとしても、国民の皇室への敬愛の気持ちが失われてしまえば、皇室が末永く存続し、社会的な存在感を示し続けることは、残念ながら期待し難い。
その3。
男系固執思考に基づくこれまでの幾多の言説が証明しているように、当事者の方々の人格の尊厳を蔑ろにし、非人道的な扱いを自明視する事態が、更に深化·拡大する可能性も予想できる。その場合、皇室に婚姻によって敢えて加わろうとする国民が今後、果たして現れ続けるだろうか。
或いは畏れ多いが、かつての桂宮と同じく、皇族ご自身が婚姻を避けようとされる場合すら、否定できないのではあるまいか。
以上、男系男子限定を維持しようとする限り、皇室が喪われるという未来以外は予想し難いだろう。
追記
去る7月27日に、女性天皇を可能にする皇室典範改正に向けた世論の盛り上がりの一翼を担おうとする、イベントが開催された。私もその末端に加わったが、この行事に力を尽くされた全ての方々に敬意と感謝を捧げたい。
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