皇位継承問題は来年、どのような展開を見せるか?それを見通す上で、軽視できない今年の出来事をいくつか振り返る。
①首相が岸田文雄氏から石破茂氏に交代した。
他に首相に就任する可能性があったのは、高市早苗氏と小泉進次郎氏。この2人のどちらかでなく石破氏が就任したのは、「よりまし」な結果だった。
②野党第1党の立憲民主党の代表が泉健太氏から野田佳彦氏に交代した。
この交代は、皇位継承問題の解決に向けた政治の場での前進という観点から、望ましい。
③その立憲民主党が衆院選挙で議席を伸ばした一方、自民党が大きく議席を減らして、与党の過半数割れという事態を招いた。自民党の「男系男子」への傾斜ぶりを考えると、野田氏を代表とする立憲民主党の影響力が増したことは、良い条件と言える。
④立憲民主党内の頑固な男系派も、野田体制になってからは、女性天皇にすら反対していたそれまでの後ろ向きな姿勢を改めた議員が多い(女系天皇には相変わらず反対だが)。
⑤衆院議長に額賀福志郎氏が例外的に再選された。
このことは、政府·与党の意思として、皇室典範特例法の時に当時の大島理森元議長が立法府の総意を取りまとめる為に再選された前例を、今回も踏襲しようとするものだろう。同氏の政治的力量には疑問符が付くが、(安定的な皇位継承ではなく)皇族数確保策の決着へ向けた本人の意欲はあるらしい。
⑥衆院副議長ポストは元々野党第1党の指定席だが、今回就任した玄葉光一郎氏は野田内閣当時、唯一、全期間を通して閣僚であり続けた政治家なので、立憲民主党の野田代表の強い期待を背負っての人事と考えられる。本人は既に来年の通常国会での決着を目指すことを公言している
(但し決着の中身は予断を許さない)。
⑦男系寄りと見られている日本維新の会は、議席を減らした上に、より男系傾斜が強い馬場伸幸前代表が退任し、国会方面の仕切りは前原誠司共同代表が行うことになった。こうした変化もマイナス要素ではないだろう(同党内にも良識派議員はいる)。
以上①〜⑦を顧みると、今年の通常国会での決着が頓挫して、来年に先延ばしされたことは、(勿論、手放しで楽観はできないが)結果的にはより良い決着を期待できる余地を残したと言える。
これによって、有識者会議報告書の提案を丸呑みするという、最悪の決着を回避できる可能性も浮かび上がった。
来年の通常国会で決着に向けた綱引きが本格化するのは、予算審議が終わって以降の4月〜6月頃になるのではないか。 そこで、一挙に百点満点の結果を得ることは困難としても、なるべくそれに近い決着を一先ず勝ち取る為には、国会での動きが加速する前から、政界対策に力を注ぐ必要がある。
それによって、真の解決への道筋も異なってくるはずだ。
▼追記
今月のプレジデントオンライン「高森明勅の皇室ウォッチ」が12月27日に公開された。