敬宮殿下の「日本赤十字社ご就職に際しての文書回答」には、皇室の役割について次のように述べておられた。
「私は、天皇皇后両陛下や上皇上皇后両陛下を始め、皇室の皆様が国民に寄り添われながら御公務に取り組んでいらっしゃるお姿をこれまでおそばで拝見しながら、皇室の役目の基本は『国民と苦楽を共にしながら務めを果たす』ことであり、それはすなわち『困難な道を歩まれている方々に心を寄せる』ことでもあると認識するに至りました」
ここで注目すべき1つは、「皇室の役目の基本」とされている内容が、上皇陛下の平成17年の記者会見(同年12月19日)でのおことばを、明らかに踏まえておられる点だ。
この時、上皇陛下は、記者が女性天皇·女系天皇を容認すれば「皇室の伝統の一大転換になります」と言い切ったのに対して、真の「皇室の伝統」とは(血筋が男系か女系かという狭い区別ではなく)「天皇及び皇族は、国民と苦楽を共にすることに努め、国民の幸せを願いつつ務めを果たしていく」ことにあると明言された。
敬宮殿下はこのおことばを真正面から受け止められ、それこそが「皇室の役目の基本」とされた。
それに加えて、「それはすなわち『困難な道を歩まれている方々に心を寄せる』ことでもある」
という、より踏み込んだ「認識」も述べておられる。
実はこの表現も、上皇陛下のご即位10年に際しての記者会見(平成11年11月10日)での上皇上皇后両陛下のおことばと、重なる。
そこで、上皇后陛下は次のように述べておられた。
「困難な状況にある人々に心を寄せることは、私どもの務めであり、これからも更に心を尽くして、この務めを果たしていかなければいけないと思っています」
更にこのおことばは、同じご会見での上皇陛下の以下のおことばを受けられたものだった。
「障害者や高齢者、災害を受けた人々、あるいは社会や人々のために尽くしている人々に心を寄せていくことは、私どもの大切な務めであると思います。福祉施設や災害の被災地を訪れているのもその気持ちからです。私どものしてきたことは(記者の質問にある)活動という言葉で言い表すことはできないと思いますが、訪れた施設や被災地で会った人々と少しでも心を共にしようと努めてきました」
この時の記者会見は勿論、敬宮殿下がお生まれになる前だ。しかし、敬宮殿下は天皇皇后両陛下は勿論、上皇上皇后両陛下のなさりようやおことば等を、真剣に学ばれていることが拝察できる。
「皇室の伝統」を懸命に受け継ごうとされている敬宮殿下のご姿勢が伝わる。
有難い。