産経新聞の阿比留瑠比記者。トランプ米大統領の日米安保条約破棄発言は無かった(「考えにくい」)と懸命に否定している(6月27日付)。随分、狼狽(うろた)えている様子。しかも、否定の根拠がおかしい。 昨年9月の首脳会談で、安倍首相がトランプ氏に以下のように「反論」(言い訳)した事実を挙げているのだ。 「日本はどの国よりも駐留経費を負担しているし、基地も提供している。駐留米軍の経費は、米国内にいるときよりも安くついている」と。 これは本来、憤激すべき話ではないか。「米国内にいるときよりも安くついている」なんて、日本政府は国民の税金で米軍をどこまで“厚遇”すれば気が済むのか、と。それを安倍氏の“手柄”のように書いている阿比留記者の感覚が、理解し難い(しかも否定の根拠にならない)。勘違いしてはならないのは、アメリカは自国の国際的な軍事プレゼンスを維持する為に米軍を日本に駐留させている事だ。 例えば冷戦期でさえ、アレクシス・ジョンソン国務省長官代行がニクソン大統領に提出したメモ(1971年12月29日)には、次のように明記していた。 「在日米軍は日本本土を防衛するために日本に駐留しているわけではなく(それは日本自身の責任である―原文)、韓国、台湾、および東南アジアの戦略的防衛のために駐留している」と。 2015年4月の新しい「日米防衛協力の指針」(新ガイドライン)でも、わが国の防衛の「主体」は自衛隊。米軍はあくまでも「支援し及び補完(補足、追加)」「打撃力の使用を伴う作戦を実施することができる(実施してもよい、実施するかも知れない)」にとどまる。日米安保条約が維持されていても、その実効性を過大に見積もってはならない。
「対米依存」自慢?
更新日:2019年6月29日